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くちなわ坂の後押し [処世]


同様な話、これは大阪の話だけれども、寺町という所に昔「くちなわ坂」といってお寺ばかり並んでいる間に急峻な坂があった。
車を引いている連中がいつもそこで悩む。その近所の寺男の子供の中に精薄児がいて、親がもて余していた。
それをある感心な人が可哀そうに思って、「お前、わしが弁当代をやるから、いつでも朝起きたら坂の所におって、坂で車を引いてふうふういっておる丁稚小僧や年寄や女房がきたら押してやれ。
しかし決してお礼をもらってはいかん。その代わりわしが夕方帰ってきたら必ずお前に駄賃をやる」と言って、まず一日駄賃をやってやらせた。
 ばかの一つ覚えで、駄賃をもらうものだから一所懸命にやる。そこでありがたがってなにがしかやろうとすると、「いや、そんなものはもらわん」と言う。
それがたちまちのうちにえらい有名になった。「この坂にえらい感心な小僧がおって、少し足らんようだけれども心がけのいい奴だ」ということになって、一月、二月するうちに、「家に来てもらえまいか」「あれを引き取りたいが・・・」という申し入れがたくさん集まるようになった。
それはなまじ小利口な、油断もすきもならんような奴よりは、智慧遅れでまじめで糞力があるのだから非常に役に立つ、これを一つ活用したらどんなにいいかわからない。その後、私は知らないが、噂に聞くと、立派に店を持つ者になったそうだ。

知命と立命―人間学講話
安岡 正篤 (著)
プレジデント社 (1991/05))
P80


IMG_0147 (Small).JPG旭川市旭山動物園







タグ:安岡 正篤
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