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知足 [倫理]

必ずしも福を干( もと )めず。


禍無きを以て福と為す。


必ずしも栄を希( ねが )わず。


辱無きを以て栄と為す。


必ずしも寿を祈らず。


夭( よう )せざるを以て寿となす。


必ずしも富を求めず。


餒( うえ )ざるを持って富となす。

                       「 言志耋録」第一五四条


                       佐藤 一斎 著

                       岬龍 一郎 編訳

                       現代語抄訳 言志四録

                       PHP研究所(2005/5/26)

                       P231

1927598龍安寺

分を知り、然る後に足るを知る。

                       「 言志録」第四二条


                       佐藤 一斎 著

                       岬龍 一郎 編訳

                       現代語抄訳 言志四録

                       PHP研究所(2005/5/26)

                       P32

言志四録

P186
 べつにナムやタマ(住人注;筆者の寺の柴犬と黒トラ猫)に長寿を誘ってみても仕方ないことだが、禅僧はたいてい長生きである。
達磨さんは百五十まで生きたというし、趙州和尚は百二十歳。
日本でも足利紫山老師は百歳を超えたし、わが妙心寺派の古川大航老師は九十八歳まで現役の管長さんだった。
 基本的にはさきほどの「知足」の考え方で自分の年齢も肯定するのが禅僧であり、だからこそ長生きするのだろう。
「この歳になってみたかったんだ。ずっと待ってたんだ。最高だよ」と、幾つになっても今を全面肯定するのである。それはけっして幾つまでは生きたいという欲ではない。あくまで、もたった今の、現状への「知足」の認識なのである。

P207
 松江城主であり、また石州流茶道の創始者でもある松平不昧公は「足ることを知れば、茶をたてて不足こそ楽しみとなれ」と「贅言(むだごと)」に書いている。
たしかにお茶の世界では、「不足」や「歪み」や[不完全さ」や「壊れやすさ」などが愛される。むろんそれも不昧公の言うように、「足ることを知れば」である。
現状を全面肯定しようという意志があればこそそんな嗜好が可能になるのだろう。
~中略~
 本当に望まない「不足」をも楽しめることこそ真の「風流」であり、それができる人が「曲者」と云えるだろう。
 老子は「曲なれば即ち全し」と言うが、幹や枝の曲がった木が伐られずに長寿をマットウするように、曲者こそが人生を長く楽しめるのである。

P210
 白隠さんの「槐安国語」巻一に、「山家の富貴は銀千樹、漁夫の風流は玉一蓑」という言葉がある。
山家とは山暮らしを決めこんだ樵(きこり)さん。その暮らす山が大雪で覆われ、「銀千樹」に見えるというのである。当然「銀千樹」というのは美しい光景として謳われていっる。
樵という仕事をこの山ですることに覚悟が決まっており、しかもとりたてて世間的富貴も名誉も望んでいないから知足している。
だからこうした「困った大雪」でもそうは思わず、美しさを愛でていられるのである。
同様に、漁夫も毎日身につける蓑一つで稼ぐのだと覚悟し、その志が揺るがないからこそ、蓑には「玉」という美称が添えられる。その覚悟の上でなら、押し寄せるさまざまな風、つまり大漁でも一匹も釣れなくても、あるいは嵐や風雪であっても、それは風流として楽しめるというのだ。
~中略~
 また似たようなことばで、「山僧の活計は茶三畝、漁夫の生涯は竹一竿」というのもある。
私の住む寺にもお茶の木が何本か残っており、昔はお寺で飲める段階まで作ったことが偲ばれるが、お茶というのはいわばお寺くらしの必需品である。
漁夫にとっての竹竿もいわば必需品と云えるだろう。現実の暮らしで「無一物」というのは無理だが、必要最低限なものさえあれば、あとはなんとでもやっていけるだろうという鷹揚な気分がこの詩からは漂う。
これも「知足」を知って「不足」を楽しみ、また覚悟を決めて「ゆらぎ」を楽しむという禅的なくらしのスケッチなのである。

禅的生活
玄侑 宗久 (著)
筑摩書房 (2003/12/9)

足ることを知る者は富める者である。
                 (「老子」第三十三章)

老荘思想の心理学
叢 小榕 (著)
新潮社 (2013/02)
P127


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